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『こん太と松の介』
(一)
ささの葉のように細い月の夜でした。
しんとした森の中に、ととギツネの咳払いがひとつ響きました。
その額には三角の赤い斑点がありました。それは、化けギツネのしるしでした。
ととは息子のこん太に話しました。
「こん太よ。いよいよ人里で修行じゃ。」
「うん。」こん太はこくりとうなずきました。
「何度も教えたが、人間は、まあまあ賢い生き物じゃ。じゃが、調子に乗りすぎると、とんでもないことをしでかすのじゃ。そんな人間にお灸をすえるため、神様はわしらに化け力を与えてくださった。」
「わかってるよ。」
こん太は人間の言葉や化け方をととに教えてもらっていました。
「お前は、せっかちだから心配じゃ。そもそも、修行とは・・。」
こん太はととの話をさえぎって、
「とと。この国で一番偉いのは誰だい?」と尋ねました。
「そりゃ、殿様じゃ。」
「よし、おいら、その殿様とやらに会ってくる。」
こん太はこんくるりと宙返りをして少年に化けました。やはり、額に三角の赤い斑点がありました。
「お、おい、ちょっと待て。まだ話が・・。」
こん太は振り返りもせず、まりが弾むように山をかけ下りました。
---------- 大分合同新聞・3/1(月)夕刊に掲載された作品です。 以後、5週にわたって、月曜夕刊に連載されます。
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